プレーリーの夜

きのうはタルサから北西へ約50マイルほど離れたPawhuskaという町まで友達とドライブそして写真を撮りに行ってきた。午後6時ごろに出発。着いた頃には陽も落ち、土曜午後8時のその小さな町は閑散としていた。近くにプレーリーがあるというので行ってみる。雨も降り出し外は気持ちいいほど肌寒く、そして静寂さが漂う。地理で習ったプレーリー。初めて訪れたそれは月明かりもない暗闇に覆われて、ぽつぽつと見える木々の形の影だけが不気味にあたりの静けさを引き立たせる。父をリビア人に持つそのアメリカ人の友達は、ムスリムであり、今は断食の期間だそうだ。陽が落ちるまで何も口にすることができない。8時半ごろになってようやく車の中で怪しげな中東のお菓子を口にする。僕もすこし分けてもらったのだが、もともと甘いものを食べないのに加えて、初めて口にするそのなんともいえないドロドロとした食感と、甘さでもない不思議な味、そして口内の水分を吸い取ってしまったあとの口の渇きに不快感を催す。さて、ムスリムとして、どんな条件であっても一日の決まった時間に彼はメッカに向かって祈りをささげなければならないという。だだっ広い草原にふと車を止め彼だけ外に出る。その暗闇と静寂の中で行う彼の祈りは、単にエキゾチシズムを感じさせるだけではなく、このアメリ中南部の大地のど真ん中、まさに in the middle of nowhere である場所において、空間的な普遍性と、信仰を超えたシンプルな神聖さを、車の中で1人待っている僕は感じ取ることができた。昼間に行けばきっと一望できたはずのそのプレーリーだったが、夜のそれは昼間には感じることのできないはずの想像と創造をもたらしてくれた。きっとそれは写真には写すことも、写ることもできない、その場にいた者だけが感じ取れる、ささいな贅沢だったはずである。今度写真ものせます。